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   樹齢264年のお寺の境内の松 ・・・ 枯れる。

 ■ お寺さんから 診断の依頼。
12月5日の事 携帯電話がなった。 相手はお寺の住職で境内の樹齢260年もの松の
調子が悪いので診て欲しい・・・と言う無いようだった。
実は この電話を受けた時 ’日本松保護士会総会’ の開催中で そのタイミングで この依頼を受けた・・・
良く考えてくださいね! 松保護士がその総会の途中に松の診断を受けるなんで ものすごいタイミングだと
思いませんか?? (^_^)/~  三重に戻ってから (開催地:栃木県) 早速現地へ出向いてみた。 
 ■ なるほど立派な松です。
 南からの撮影。 

 確かに全体的に葉が 赤茶けている。
 
 この時点では なんとも判断できない。

 ■ まずは外観の診断です。
おっとその前に 一番大事なのは ヒヤリングです。 住職に いつ頃から 変化に気がついたか? これまでの管理方法は? など 細かい詳細を尋ねた。 色々な事がわかった。

それらを考慮して まずは葉の見た目からの診断です。 
さて 色々と葉の写真を掲載してみたが はっきりって これだけでは ’マツ材線虫病’ともなんとも判断も出来ない。
実は10月に 剪定作業を行ったようで 古葉が もみあげ剪定されていた・・・・これでは 葉の状態から判断する
イチョウ病の特徴が出ない。 つまり マツ材線虫病かどうか 判断しにくい。

されに・・・・・・

樹幹注入までされている。 この薬剤が ちゃんと効いていたとすると マツ材線虫病 では無いという事になる。
されに調査をすすめる。
根の状態を調べる。   
 歩道造成事の根への影響の可能性も 
 考えて調査する。
 しかし 平成12年という事を考慮すれば
 今回の急変とは 因果関係があるとは
 考え難い。

 また 根元付近の土壌に 踏圧等の 害は
 見られなかった。

 
 ■ 材の採取。 害虫等の有無の徹底調査。
葉の変色に気がつき2ヶ月チョットが経過していた。  枝をからしてしまう 害虫も居るので それらの食害跡が無いか良く 調べてみた。 また怪しい部分は 材を採取して 持ち帰り 調べる事にした。 

採取場所: 枝枯れの起っている 枝  2箇所
        南方向ー西方向 の根 2箇所 ・・・・・ 以上の4点を採取した。


 ■ 事務所にて 顕微鏡を使った調査
枝をじっくり見るも ’マツモグリカイガラムシ’等の 加害跡は発見する事はできなかった。 
そこで 一番の疑い ’マツノザイセンチュウ’を分離してみる事とした。
すると・・・・・

  ♂の特徴:交接刺
♀の特徴:陰門   
こんなセンチュウが検出されてしまった。 これだけで 十分判断できるが 今回の案件は 
『樹齢260年のお寺境内の松』 という事もあり 念のため 専門機関へ同定依頼を お願いした。
まぁ ・・・ 結果はいうまでも無いが。

ちなみに 今回の検出、 枝1からは全く検出されず、 枝2からは わずか1匹。 しかし 根からは大量に出ました。
これは 樹幹注入の影響が大きい物と思われる。

 ■ 檀家さんに集まってもらい 現状を説明。
調査から 1週間後  檀家さんに集まってもらい 現状の説明会をおこなった。
見た目にはまだ 緑色をした部位もあるのだが・・・・ 樹液の流動は完全に停止していて このまま枯れて行く事を
だまって見守るしかない 事を説明。 
松の為にも 暖かくなる前に 伐採することを 勧めた。 材を何かに 利用するほうが まだマシだと。


 ■ 実は調査前に 気がついていた事。
これは そのお寺付近の アカマツの写真です。 見た目に ’マツ材線虫病'と判ってしまいます。
実は お寺の調査を行う前に その付近の調査も行っていた。 
そして 実際に松にご対面し、 ヒヤリングにて過去の 管理方法や 樹幹注入などの経緯を 聞いた時に 

 
『9割の確率で マツ材線虫病だな。』 と内心 確信していた。

来年 伐採が行われる予定になったが その時は 立ち会うつもりでいる。




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