この松は 何故枯れた? ザイセンチュウ病か? 

 ■ ザイセンチュウ病か?
8月の非常に暑い日 電話がなった。
『うちの松が急に枯れたように おかしくなりました。 一度みて頂けませんか?』  と。
その時は
『まぁ ザイセンチュウ病だろう。』  そう 高をくくっていた。 
 ( ザイセンチュウ病については こちら を参照してください。)
それはそうでしょう こんな時期に 1〜2週間で 急変するなど まず この病気を疑うのは 普通です。
しかし 現地へ行ってみると・・・・

 ■ ザイセンチュウ病ではない。
 クロマツ A
クロマツ A (別方向から撮影)
  クロマツ B


この写真だけでは解りにくいが ザイセンチュウ病の特徴的な針葉の枯れ方とは違う。




 樹脂漏洩試験 30分後。

 正常と診断された。

 もちろん材も もって帰って 線虫分離試験も行った。 
 結果は言うまでも無い。
 
さて ザイゼンチュウ病でないとの診断は ほぼ自分の中では 出たものの (クライアントに対しては 線虫分離の結果の後です) 
じゃ 枯れた原因は何なの? って事になる。 この時点では まだ 原因は特定できていない。  

 ■ あれ? 草の枯れ方が変。
松の周囲をよく観察した。  すると 変なことに気がついた。 草の枯れ方が変なのである。
どうみても 人為的な 何かが行われたとしか思えない。
  草の生えている所と と生えていない
  所がはっきりしている。

  ひょとしてこれは・・・・
これまでの経緯をヒヤリングしてみた。 そして質問をした。
『除草剤使いませんでしか? しかも 粉状で振るタイプのものを。』   やはり・・・ビンゴ。  
特定除草剤の使用暦がありました。 松には絶対に 使ってはいけない除草剤。
本当は ここにその名前も記載したいが 問題ありなので 掲載は控えます。 その除草剤 裏面に しっかりと
 
’’得に松は弱いので使用しないで下さい’’ と書いてあるので十分注意してください。
ヒヤリングから解ったこと。
除草剤散布日は7月30日で 散布後降雨があった。 それは気象データからも裏づけがとれている。
粒剤を散布して直後に降雨があった・・・ それは除草剤としては効果はばっちりでしょう。 (-_-;)

今回枯れた松はクライアントの家族にとって大切な 松だった。 枯れた事を非常に悲しんでいました。
このような事の起こらないように この事例を掲載したいと思う。  今回の枯れた原因は 
除草剤によるもの と 断定しました。

■ 松保護士の誤診
実は 診断した松は上記の A、Bの2本以外に もう一本あった。 それはこの敷地から そんなに離れていたわけではない。
 針葉がわずかに黄変色している。
この状態を見て・・・ 『この程度の事 松にはよくあることですよ。 大丈夫ですよ。』  と口頭診断してしまった。
そして それから一ヵ月後・・・この松も枯れた。 同じ除草剤による枯れでした。 
『まさか・・・・・』
と思うもいまさら遅い。 完全に誤診です。  じっくりみるとその松の根元周辺も 顕著ではないが 草の枯れ方がおかしかった。
後日のヒヤリングで その松周囲にも 除草剤を散布していることがわかった。 
今回のケース クライアントには悪いが よい経験をさせて頂いた。   明らかにそう見える場合でも 結論を慌てず 冷静に 周囲を観察し
そして 総合的な判断を下す。   ・・・・ と。
改めて書く事ではないが 現地でずっと冷静で居られなかった自分を恥と思い 次回への経験に生かしたい。

しかし・・・ 
あの時 『除草剤の影響があるかも・・・』 と見抜いたとしても 自分に何が出来たのだろうか・・・・

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