2010年 三重県のナラ枯れ 総集編(日本海型)

 管理人の石黒です。 今年の三重におけるナラ枯れの現状を まとめようと思いつつ 時間だけが過ぎてしまいました。 
 あまり 遅くなると自分自身が忘れてしまうのでとり急ぎ 日誌に掲載します。


 ■ 6月18日
北勢町の昨年の被害現場を訪れる。 またカシノナガキクイムシ(以下 カシナガ)の本格的な脱出は始まっては居ないだろうと思い
つつも現場へ足を踏み入れた。

 
昨年 被害調査のために印をした コナラ
やはり まだ脱出は始まっていない様子。

2008年に防除の為に 被覆されたコナラ    
このときは 被害木が5本しか発見されて無かったので
初期防除は絶対に有効! ・・・・と思っていた。
しかし 被害状況を この山の中で 自分の足だけで
探すことは 最初から無理があったのだろうか・・・・

これでも 2009年の脱出期には 被覆から脱出できない      
カシナガが 沢山居たが。
   ↓↓          (2009年撮影写真)
 →
2009年撮影 2010年撮影
 昨年の枯死木と その翌年の状況。 当たり前だが このまま朽ちていくのみ。 樹種は ’クヌギ’

 なんだか妙な コナラ? を発見。 ミズナラにも見えるが・・・ でもこの辺りの標高ではミズナラの分布域ではないのでは・・・・。


 ■ 7月18日 亀山 新名神から見えたコナラの枯れ
お仲間から電話入った。  
『新名神高速から ナラ枯れらしき 枯れてるのが見えるよ。』
  
早速 現場へ行ってみた。 確かに枯れていた。
← うん 確かに枯れている。 
  樹種はコナラ。 


       カシノキ→
あらま。 人為的だったのね。 
まぁ たまにはこんな事もあります。   
もうこんな 場所でナラ枯れが発生したのでは 鈴鹿は来年か? と思いましたが とりあえずは誤報でした。


 ■ 7月18日 多度町の被害
多度で被害があるとの情報を得て 現場へ行ってみた。
車では入れなかったので 徒歩にて入山。

途中 鹿の被害を受けた樹が目だった。 
コナラ 被害木を発見。
フラスが丸い事から 雌の穿孔が始まったばかりであると推測される。

7月18日という事からも だいたいそんな時期です。

  アラカシの被害木も発見した。    
 スダジイの半枯損も発見した。 スダジイへのマスアタックも結構 みつかった。 ただ ひどくでも枝枯れで 完全には枯れていなかった。
これ以降(7月15日以降) 現場へ出向いてないので 本当の事は解らないが。

 ■ 8月7日 朝日町の被害
 またまた お仲間から電話が鳴った。 
前回 亀山での被害?を連絡をくれた人です。
『湾岸高速 朝日町付近でそれらしきものが・・・・』  と。
 
『また 誤報なんじゃ ねーの!?』 
なんて冗談も交えながら 早速現地を確認。
 遠景には ナラ枯れ。


結果やはりナラ枯れでした。
四日市まであと数百メートルです。 来年は確実にでますね。

 ■ 8月7日 愛知県の某テーマパーク
朝日町をあとにして そのまま あるテーマパークへ出かけた。 愛知県の被害の話になるのだが是非 紹介したい。 妙な事になっていたのです。
この写真 まるで腹巻のようにビニールが巻いてあります。 これって全く意味がない。 推測の話になるが これを施工した人は ネットか何かで
『ビニールを幹に巻けば良いのか!』 と思ったのではないのだろうか。   カシナガの事を理解していれば こんな防除方法は取らない。

つまり ナラ枯れ問題が正確に世間に伝わっていないという証拠でもある。 
 

決してえらそうな事を言うつもりは無いが 私は ずっとこうやって言い続けて来ました。

『ナラ枯れは もちろん樹木が枯れる事も問題ではあるが それ以上に この問題を世間が知らない事が問題です。 
問題解決には世間への周知がまず必要です。 そしてナラ枯れを 正確に理解していただいて 
その上で どうするかを 地域レベルで考えましょう!
考え方にはいろいろあります。 その為に 各分野に専門家は居るのです。 』 
 と。

テーマパークとナラ枯れ。 

 ■ 8月15日 朝明付近の調査
朝明渓谷付近を調査してみた。  朝明ヒュッテ 付近でそれらしき枯れがあるとの情報からです。 早速 現場へ行ってみると・・・確かに枯れているが・・・
なんとなく違う。 成虫を採取しようと試みるも 出てこない。
 一見 カシナガの被害のようにも見えるが・・・   このフラスは違うだろう。
 成虫が採取されなかったのでなんとも言えないが 何かしらの原因で枯れた後に キクイムシの穿孔を受けたものとおもわれた。
余談であるが こうやってスギが枯れているのをよく見かける。 
これは何が原因だろうか???
朝明ヒュッテを後にして 入り口付近のグリーンランド付近にもどった。 そこに 枯れている樹木を発見した。
見上げる程の高い位置に枯れた樹木がみえる。 ここからでは樹種も解らないが とりあえず山に登ってみることにした。

・・・ところ ビンゴでした。 カシナガの被害による枯損です。 成虫の存在も確認したのでまず間違いありません。

丁度、三重県民の森の裏辺りになります。

被害はこの1本だけで他には見当たりませんでした。 私の調査ではこの被害がもっとも鈴鹿市に近い。
(平成22年11月現在)

 ■ そこからさらに南を調査
鈴鹿山脈に沿って朝明から北方面を調査した。 不思議なことに 根の平、田光では被害が確認できなかった。 てっきり 2008年被害の北勢町から南下してる
かと思い込んで居ただけに 根の平、田光に 被害を見つけることが出来なかったのはちょっと不思議。 見逃しただけなのかもしれないが。
  宮川ダム付近 

実は。。。 
先ほど 鈴鹿に一番近い被害は グリーンランド付近を書いたがあくまで確認しただけであって 未確認にはこんな場所もある。→ 
某ゴルフ場の敷地内なのでさすがに勝手には調査できない。
これが ナラ枯れだとするも間違いなく鈴鹿に一番近い。


 ■ 8月18日
3日後さらに歩いてみた。  15日の調査よりも細かく歩いてみた。そうしたところ 面白い(!?)ものを発見。
 
 発見したときには スダジイか? と思ったが ’ツクバネガシ’でした。

 ツクバネガシの枯損例は 報告されていない。(多分)

 こいつも完全に枯死ではなく 根元の方の一部の枝は 生きてはいたが
 ほぼ 全枯損なり。


この日は天気がよかったので 枯れた樹木がはっきり見えた。 すこし 枯損ギャラリーです。
大安町付近の2010年の風景です。 昨年はこんなにありませんでした。

 ■ 9月5日 宮妻峡 
なんと ’宮妻峡 右岸にて 枯れが出ている’ との情報が入ってきた。 
 
『え? 右岸といえば そこは 鈴鹿市になる。 つまりカシナガの被害だったら 2010年に鈴鹿で被害が出た!?  私の予想よりも 2年も早い!』
とにかく現場へ。
確かに対岸にそれらしき樹木を発見。 
 しかし行くだけでもえらいこっちゃ。
 左の写真の中央奥が 赤くなっている事がお分かりだろうか?
 直線距離でも 1kmはありそう。
 これから道なき道を 単独で歩きます。

     ・
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     ・
 エンヤコラ1時間ほど歩いて 現場到着。
よかった〜。 カシナガの被害ではありませんでした。


 鹿が樹皮を食べてしまった事による枯れです。
 樹種もタブノキでした。

  2010年現在 鈴鹿市での被害はまだ見つかっていません!
 ■ 9月7日 石水渓
石水渓で! という情報を得た。早速 調査してみる。  鈴鹿に非常に近いが  ここは亀山市。 でもこんな所で出るのだろうか??? 半信半疑。
  
この写真で解らないが カシナガとは違います。 断定はできないが 多分 ’ヨシブエナガキクイムシ’でしょう。

 ■ 9月7日 鈴鹿峠の怪
そのまま 林道を走って 石水渓から鈴鹿峠へでた。 余談ですが こんな道あったのですね。 全くしりませんでした。 
ん・・・・・・。
完全にカシノナガキクイムシでした。 成虫も採取されました。 厳密にはここは 亀山市だが・・・・ 鈴鹿に近いなぁ。
しかし なぜこんな所に もうでたのか? 滋賀県からの 被害か? もう鈴鹿峠を越えたのか?? ん・・・・。 
 
なんだかこれ怪しい。
調べては居ないが昨年の被害跡かも。  ・・・・ だとすると 人為的な要因が加わっているか??
 ■ 9月10日 四日市 県(あがた)地区
 県(あがた)小学校付近
こんなビニールトラップ(!?)を仕掛けてみた。

いつも蚊が多くて 悩まされるのですが これなら
同じ場所にずっと居なくてもよいので
ちょっとは楽チンでした。
 しばらくすると成虫を確保。
 これは♂です。

 これで四日市市での被害も確認されました。

 ■ 10月6日 藤原岳登山調査
藤原岳を登山し 被害状況を確認するという事だったので お願いし同行させて頂いた。

鹿君の食害のせいか 下層植生がない。 (写真右)

歩くこと1時間弱ほどで最初の被害樹を発見。

北緯: 35度11分09秒  
東経:136度25分27秒  
 樹種はコナラかな? ミズナラかな? 
 樹皮からすると多分コナラだけど ・・・高すぎてわかんないや。(-_-;)



 ・・・さらにどんどん進む。
 途中 池?? っ表現して良いのか・・・・

とにかくこんな物が多数あった。

さらに面白いもんをみた。 初めてみたので感動的!

↓↓
知っている人には どうって事もないのですが ’ドリーネ’ といいます。  天然に出来た落とし穴みたいな物です。
長い年月をかけて溜まった雨水などが 石灰岩を溶かし 大きなくぼみが出来たとの事です。 
穴の奥から 学術的に有用な動物の骨などが見つかるケースも多いとか。 ・・・それってやっぱり落とし穴じゃない!? (笑)


 山に住む生き物たち。 ヤマミミズ?(左) と ミドリセンチコガネ(右)
 さらに面白いものを発見。
 これ イヌツゲなんですが 
 どうみても剪定されたようにチラシ玉造りになっている。

 いったい誰が剪定したの?? ・・・ その答えは鹿君です。
 鹿君は イヌツゲの新芽が伸びてくると、そこがおいしいので
 そこばっかり食べるうちに イヌツゲはこんな樹形になってしまうという。
 現物をみれば 初めて見た人は驚くこと間違いなし。
 


山頂到着。 そこから見える景色。 琵琶湖が遠景に見えた。

さらに山頂から見える景色には・・・ かなり ナラ枯れらしきものが 確認された。
  調査を終えて・・・・予測はしていたが 県境(滋賀県)付近は かなりの ミズナラの枯損が確認できた。 
  鈴鹿市に被害が出るのは この被害を調べ始めた頃は まぁまだ先か と思いましたが 今年の調査からの個人的感想は ずばり平成24年ですね。
 

最後に藤原岳麓の写真を見ていただきたい。 平成22年10月6日撮影の連続写真の合成です。

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